2005.06.01

人類が最初に手にした道具

赤津 孝夫

人類にとって火は、哺乳類の頂点に立つことになった重要なファクターだったわけですが、もう1点知能を高めた道具がナイフです。

初期のそれは、棒切れかその辺に転がっている石ころだったに違いありません。やがてそれは、石と石を打ちつけたり堅い鹿角を押しつけ剥片させ、鋭利な刃物状に作り替えられ、後期には操作をするハンドルが付けられ現代のナイフと変わらない石器になりました。

地球上の人口は1999年に60億人を超え、30万年前はたった100万人だった割には、発見される石器が異常に多いのは必要に応じて作り続かれたからだろうし、使う人が簡単に素早く作る技も身に付けていたからです。 人類が最初に手にした道具最古の石器は、先行人類が出現した時期と同じ200万年も前に作られ、その用途は切る、剥ぐ、穴を開ける、刺す、掘るなど、およそ現代の我々の生活で使われている用途別の道具が、全てその時代に完成していることは驚きです。そしてこの道具の使用が直立姿勢をもたらし両手を解放し、二足歩行を可能にし、それが互いに作用しあい急速に脳の発達を促したに違いありません。従って人類にとって原点の道具がナイフであり、この道具により更に次から次へと道具を発達させ文明が開かれていったのです。

ナイフを文明生活とは無縁に感じている人が多いと思いますが、原始生活を強いられたサバイバル状況の中や、アウトドアスポーツでは今でも一番頼りになる道具であることに変わりありません。そして現在考えられる最高の鋼を使って、技術の粋を凝らし手作りされているカスタムナイフこそ、人類史上最強のナイフと言えます。鉛筆をナイフで削れない人や料理用包丁を怖がるようでは、厳しい自然を相手にできないのは当然のことです。気に入った一本のナイフは、野性を取り戻し荒野で生きていく中で何よりも頼りになる道具です。

レポーター紹介
赤津 孝夫

1947年長野県生まれ。日大芸術学部写真学科卒業
幼少時より道楽好きの父親の影響で、釣り、狩猟、山登りなどを通して四季の山野に親しむ。1970年代の初頭、日本にフライフィッシングとバックパッキングを紹介した芦沢一洋氏と出会い、エコロジーに根ざしたアウトドアスポーツの必要性を感じ、1977年アウトドア用品の輸入販売会社A&Fを創立。「スポーツナイフ大研究」(講談社)、「アウトドア200の常識」(ソニーマガジン)、「アウトドア・サバイバル・テクニック」(地球丸)、の著書がある。