2013.11.15

「走作楽天」第4話 ワーク・ライフ・バランスって???

渡邊 千春

※表紙イラストは渡邊千春さんの奥様が本連載用に書き下ろしてくださいました。

【第4話 ワーク・ライフ・バランスって??? 】

 2003年から2005年までボストンマラソンに3年連続で参加しました。2009年からは5年連続でヨーロッパのトレイルレースに出ています。毎年長い休みをとって海外のレースに出る秘訣はあるかという(核心の?)点ですが、必ずしも私の職場が外資系だから、私がマネージャーだからそうできるわけではないと思っています。私が長期の休みをとるために心がけていることは3つです。

 一つ目、自分が情熱を持って取り組んでいるトレイルランを職場や仕事の関係者に知っていただけるよう宣伝活動に努めています。2012年のUTMFのレースの前には会社の組織の上から下まで、一部顧客やお世話になっている弁護士や会計士の先生方も含め大勢の方に募金のお願いをしました。100マイル完走したら幾ら募金するかをレース前に約束してもらい(例えば、1万円)、30位に入ったらその倍、10位に入ったらその三倍の募金をしてくださいとお願いしました(募金する先は、こちらで指定した妻がボランティアで働いているNPOでも良いし、チャリティ参加者の希望する団体でも可としました。)。アジア太平洋地区の総支配人を含む大勢の社員や、外部の方も募金に応じて頂きました。レースを完走する力になっただけではなく、レース中30位以内に入ってから、ムクムクいたずら心のような気持ちと共に気持ち良くペースアップ出来たのはこの募金のお蔭でもあります。最終的には17位でチャリティ参加者の約束した募金が倍になり総額150万円ほどの集金に成功しました。レース後に集金に行くと(同僚や上司)「寝ないのか?」、(私)「仕事と一緒じゃないですか。でも、ゴールしたらヒーローですよ!仕事と違って‼」みたいな会話があって、和やかにでも周囲の方にトレイルランを知っていただくことが出来たと思います。

 二つ目、部下や周りの社員にも休みをしっかりとってリフレッシュしようという働きかけをしています。私と同じ程度連続して休暇をとる部下も少なくないです。ある時に、人事のデータを見せてもらったのですが、30人弱の自分のチームの有給休暇の取得状況が全社で圧倒的にトップでした。外資系の会社ですから私より年配の社員が部下だったりしますが、「生まれて初めて2週間の休暇をいただきます。」みたいなことをハニカミながら話してくれるとうれしくなります。自分だけが例外というのは、日本の会社であれ外資系であれ長続きするはずがありません。

 三つ目、自分の仕事やポジションを代替しにくいものにすることです。ここで重要なのは仕事を抱え込んで代替しにくくするのではないということです(その場合、長期間休めなくなります。)。これは転職後に学びました。香港の駐在を経て銀行の本部勤務になったのですが、香港駐在時代に初めてやりがいを見出した何かを創造するような金融の仕事を本部で続けるのは不可能だったので2002年に外資系の証券会社に転職を決めました。転職先では2008年のリーマンショックにかけて増え続けた外国人投資家の日本の不動産への投資に関係した仕事がメインの仕事になりました。実は、転職先が用意した仕事は別の仕事でしたが、運命のいたずらで転職初日に在日代表が自ら参加するクライアントとのミーティングに参加することになり、そのクライアントとの仕事が私以外では代替できない仕事となったのです。そのクライアントは、転職先ではグローバルに最重要なクライアントの一人だったと後から知るのですが、そのようなクライアントの仕事でミスりたくないという心理が働き、在日代表を含めそのクライアントが必要としている、ただし転職先でだれもやったことのない業務を皆がスルーする中で、希望して私の担当業務とさせてもらいました。その業務とは、クライアントが東京の都心の一等地を購入しインポートブランド等の店舗仕様の商業施設に開発するにあたり、クライアントと共にそうした開発プロジェクトに共同投資をする日本の機関投資家を探してくることでした。外国人の開発を伴う不動産投資自体稀でしたので市場でも前例のない仕事だったと思いますが、マニュアル通りの業務に辟易して転職したのですから、転職直後にこの仕事が回ってきたのは私にとって正直ラッキーでした。会社としても初めて取り組む仕事だったので、社内体制の整備や日本の投資家のマーケティング等、内部外部に及ぶ様々な準備が必要でしたが、約半年かけて第一弾のプロジェクトの共同投資を取りまとめることが出来ました。関係者が契約にサインしたのが初めてボストンマラソンに出場するために日本を出る前の日でした。良く外資系ではポジション等自分の欲しいものをつかみ取る(英語で言うと“Earn”)と表現しますが、何かをつかみ取ったことを実感しました。このクライアントとの同様の仕事はその後も継続的にあり、第一弾案件で関係を築いた日本の投資家との共同投資案件をその後も取りまとめ、私以外では代替されない仕事になったのです。そのクライアントの代表者は私がそのクライアントの為に期待以上の成果を上げてくれたことや、代表者自身がボストンの大学を出ているという縁もあって私のボストンマラソン出場も大いに応援してくれました。偶然が重なり最初の転職先で代替されない仕事というコンセプトに接したのですが、その後も置かれた立場で代替されない仕事ってなんだろうと常に考えています。このエッセイのタイトルでは楽天という言葉を使っていますが、楽天には「境遇に易んじる」という意味があるそうですが現実は受け止めながらも理想は必ずあると信じて進むのが私の楽天主義です。因みに走作とは「型破り」という意味があります。

 最近よく聞くワーク・ライフ・バランスという言葉ですが、私は、自分がやりたい仕事と趣味であるトレイルランニングに多くの共通項を見出したことや(詳しくはPart1をご覧下さい。)、ワークもライフの何れも時に(ひどいときには同時に)無茶苦茶オーバーウェイトになるという私なりの事情もあり、バランスをとろうなどという対立したコンセプトだとは考えていません。もちろん、トレイルを走りながらPCの作業などはできませんし、仕事中に心拍数を上げるトレーニングができないのも事実ですが、長時間拘束され夜中に電話会議をしていてもトレーニングができないとは考えずに、この間はメンタルを鍛えているのだと考えます。また、仕事中に新たなトレーニングの発想が沸き、トレイルを走っていると不思議と仕事のアイディアが思いつくのも、ワークはワーク、ライフはライフと考えていないためだと思っています。仕事とトレイルランニングに共通する有効な考え方も沢山あると考えていて、主要なものをやるべきこと、してはいけないことにまとめると以下の通りになります。

やるべきこと1:自分で出来ることを前提に!

 私は、自分のコントロールできない第三者が何かをしてくれることを前提に計画を立てません。例えば、レースで誰かにサポートしてもらう場合、サポートが仮にうまくいかなくてもレースを続けることができる計画がベースとなる計画です。ビジネス上も計画を立てるにあたり、直接交渉をしているクライアントはともかくそれ以外の第三者の判断が関与する部分については、ベースの計画には織り込まず、Opportunity(第三者の協力が得られればプラス)、Risk(第三者の協力が得られなければマイナス)と考えています。他力本願を計画上排除するのです。2012年のUTMBで、Aさんがサポートを申し出てくれました。ところがコースの最初のサポートポイントとしていたサンジェルベのエイドステーションでAさんがいない。まあ、レースの序盤なので特に気にせずに先に進みました。次のサポートポイントのコンタミンでAさんと奥様のMさんが待っていました。Aさんの様子がおかしいので聞いてみると「スタート地点で車をレッカーされた」と。幸いなことに、Mさんが私の荷物を持ってスタート地点にいてくれたおかげで計画通り私はサポートしていただけたのですが、サポートなしでも走れる準備ができていた私は、Aさんに「車をレッカーされた」と聞いた時に、焦るどころか話を聞いて吹き出してしまいました。異国で車をレッカーされて困っていたであろうAさんに対してとても失礼なリアクションだったと反省しています。しかしながら、この状況でヒッチハイクしてサポートを最後までしてくれたAさんのリカバリーも驚嘆に値すると思います。

やるべきこと2: 環境の変化に対応する

 人間は、自然環境をコントロールすることが出来ません。唯一できるのは、所与の自然環境により良く対応することです。トレイルランであれば、雨が降ってぬかるむ下りは最初から靴底を滑らせて、ひざや足の筋肉に対する衝撃を減らす。風が強ければ、向かい風の時に身体に風が当たりにくくなる姿勢を保ち、追い風の時には背中に受ける風を推進力に使うことができます。自然環境の変化に人間は弱く、その変化に支配されているという意識はマイナスに働きがちだと思います。私は、支配されている意識は払しょくしマイナスをよりポジティブに変えることを考え行動します。職場でも会社の命令で人事異動したり、人事異動の結果上司や部下が変わったり様々な環境の変化があります。変化の犠牲者になったようなネガティブな思考に支配されないよう、少しでもより良く変化に対応することが大切です。勿論、環境の変化を無視することや過小評価することを勧めているのではありません。環境の変化が相応に(ビジネスマン)生命に危険を及ぼすような場合、直ちに生命維持モードに入らなければなりません。

やるべきこと3: シンプルかつオンリーワンの目標をもとう

 英語では、しっかりした人物だと表現する際に“He/She knows what to do”と言います。直訳すると「彼(彼女)は、何をしなきゃいけないか知っている」。この何とは、目標のことと置き換えるのが私には一番しっくりきます。つまり目標とは、今やらなければいけないことです。逆に、目標がない人は何をしなければいけないか分からない人。仕事でもトレイルランでも次に何をすべきか分かっている人は強いです。迷いがありません。目標は、シンプルかつ一つだけであるべきだと思います。複雑な目標の達成を目指すととたんに迷いだします。目標には上下関係があって、その時々での個別の目標の上位にくる目標がいくつか存在します。複雑な目標とういうのはいくつかの優先順位の違う目標をごっちゃにしている場合が多いと思います。最終的な目標が常に一つである場合目標がぶれないということなのだと思います。私の場合ですが、仕事であれ趣味であれ何故その目標なのかを三回か四回繰り返していくと「達成感を得ること」に辿り着きます。香港でトレイルランを始めて気が付いた私のトレイルラン、仕事に共通する最上位の目標です。

やるべきこと4: 必ずできる最低限の目標を持つ

 ぶれないための大きな目標を持つことも大事ですが、仕事でも、ランニングでも継続しなければ最終的な目標には到達出来ません。そのためには、日々達成可能な最低限の目標を持つことが良いと思います。私の場合、三鷹の高架橋から富士山の方向に向けて手を合わせることと井之頭公園の弁財天にあるカエルの置物に水をかけることがそれです。その工程だけで自宅から4km程度なので天気が悪くても自分の体調さえ悪くなければ続けられます。家族が一日を終え「無事帰る」ことを願う願掛けもかねています。会社であれば、部下が私と接して少しでもハッピーになってもらうこと。これは、業務の障害になっていることをマネージャーとして取り除き部下にハッピーになってもらうような高尚な目標だけでなく、おやじギャグ的な冗談でその場の雰囲気を柔らかくするようなことも含みます。計画倒れに終わる人は、日々過大な目標を自分に課してないでしょうか?過大な目標はストレッチゴールということで、出来たら本当にすごいことぐらいに思っておけばよいと思います。

してはいけないこと1: 予見を持たない

 私は、トレイルにいるときも仕事中も何をしたら必ず何かが起きるといった風に考えないようにしています。極端に聞こえるかもしれないですがビジネスマンで「必ず」という表現を使う人の言うことは疑ってかかります。仕事の性質にもよるのですが、不確実性や想像していないリスクは沢山存在します。トレイルランニングでも、体験済みの距離でも全く未知のコースだったり経験済みのコースでも繋いで距離を延ばしたりすると次元の違う疲労を感じたりすることがあります。気象条件や体調も大いにパフォーマンスに影響します。陸上競技場のトラックを10周した場合と20周した場合といったような想像しやすい変化ではなく、様々な要因に基づいて不連続の変化が起こります。予想していなかった変化がパニックを引き起こすのが最悪です。計画はあくまで計画で、当然うまくいかないことがあり、どの様にうまくいかなくなる可能性があって、その場合にどうするかを成功するまで常に考えるのが重要です。

してはいけないこと2:他人の目を気にしない

 人に見られる意識が過度に高いと肩が凝り、運動だけでなく仕事のパフォーマンスにも害が出ます。日本人はこの傾向が特に強いようです。肩凝りを感じてなくても鎖骨の下の大胸筋の上部がカチカチになっている人が多いと聞きました。これは走っていても仕事をしていてもマイナスです。腕の振りに差支え、その結果スムースに走れなくなります。デスクワークの結果肩が凝るのが当たり前だと思っているあなた、それがそうじゃないとしたらとても損していると思いませんか。どうしても他人の目を気にしてしまうランナーにお勧めなのは一定の距離を走ったら(例えば5kmおきにまたは給水の度に)、止まって肩をぐるぐる回す等上半身を緩める約束事を作ることです。外国には肩こりというコンセプトがないと言われています。アメリカで育った長女の幼馴染の日本人も肩こりの経験がないと言っていました。個性が重んじられ他人の目を気にすることが少ないためだと思います。肩凝りの根本的な治療法は、他人の目を気にしないことです。他人の目を気にすることをやめて、多くの外国人ランナーのように腕をきれいに振って気持ちよさそうに走りたいものです。

してはいけないこと3: 流されない

 走り出してしばらくすると自然に身体が温まりペースが上がります。走る前に燃焼系のアミノ酸などを摂取するとさらにオーバーペースになった経験はありませんか?私は、燃焼系のアミノ酸を摂取するにしてもレースの中盤以降にしています。レースの前半はとにかく気持ちが高ぶってペースアップしないようにはやる気持ちに蓋をするように淡々と走ることにしています。スタート直後の渋滞で、アメリカンフットボールのランニングバックの様にカットを切って前のランナーを抜いて行ったりするのもどうかと思います。どうしても前半にオーバーペースになってしまうランナーの方は、意図的に会社の嫌な上司でも思い浮かべてスタートしたらいかがでしょう?一方で、レースの後半にうまく体力・気力を残していると前のランナーに追いつくことによりさらに元気になります。ビジネスでも流されない意識がないとプロジェクトの前半にモチベーションが高く後半に低くなりがちです。一人一人が流されない意識を持つのが理想ですが、それが無理な場合マネージャーがきちんとプロジェクトマネジメントするとともにモチベーションが下がる時期に士気を高めるよう努めることが大事だと思います。ボストンマラソンの参加者向けの主催者が用意するパンフレットに“Don’t get carried away(流されるな!)”とありました。下りで始まるボストンマラソンなのでそのようなアドバイスなのですが、さすが老舗のマラソンならではの短く的を得た言葉だと思い、その後もレースのスタート前に“Don’t get carried away”と呪文のように唱えるようにしています。

してはいけないこと4:数字に支配されない

 ビジネスもランニングも定点観測は有効ですが、定点観測を数字の把握に終わらせ「今月300km走れたので合格」とか、最悪の場合「今月300km走るために月末に無理してだらだら50km走った」などという結果になるのは回避したいところです。定点観測と合わせて、定性的な評価も忘れないことが重要です。「今月は仕事がきつくて100kmも走れなかったので明らかにトレーニング不足だが、毎日20時間働いていたのでメンタルは十分鍛えられている」と考えることもできるわけです。私もランニング日記のようなものをつけていた時期もありましたが、数字に支配される恐れから、記録をつけることを一切やめ、自分の感覚を信じることにしました。  

してはいけないこと5:身体が出すシグナルを見逃さない

 身体は本当にだめになる前にシグナルを出します。例えば私の場合ですが腸脛靭帯という太ももの外側の靭帯が固くなりクッションの役目を果たさなくなった後に引き続き走り続けると膝が痛くなります(ランナーズニー)。脹脛靭帯が痛くなる前には脛やふくらはぎに違和感を感じることが多いです。このようなシグナルを見つけた段階での対処方法を知っていることが大事です。マッサージをしたり足首やその他の関節を動かしたり特段変わったことをするわけではないですが、これらを知っていているとレース中でも大きな故障に至る前に対処できることが多いです。

 会社のような組織も身体の組織と同じようにごく一人でも機能をうまく果たせないと、大きな組織の機能がうまく働かなくなるのも似たようなメカニズムなのだと思います。身体の故障と同様に、予防策は一人一人が機能しているか普段から目を配り、機能しなくなりそうであれば症状にあわせ対処することですが、他人は自分の筋肉の様に素直に反応してくれないのでそこは難しいところです。

 【Chiharu`s Trail Pick】”世界のトレイル”Trail Gapen Cimes, France(トレイル・ギャップの頂~フランス~)

私の友人Vincent Chautardが生まれ育ったGapという町を何度か訪れる機会がありました。Gapはフランスのアルプスとプロバンスの境にあると言われますが、地中海からナポレオン街道を北上していくと一挙に山並みが地平線に登場するのがやはりGapの周辺でした。最寄りの都会はTGVの駅のあるAvignon(アヴィニョン、童謡「アヴィニョンの橋の上で踊ろう」で有名)、又はTGVの駅だけでなく空港もあるGrenoble(グルノーブル)から何れも70~80kmの距離に位置しています。GrenobleからGapは在来線が繋がっていて、1~2時間に一本、一両編成の可愛い電車があります。私が今回お勧めするのは、Gapの街中からも12~3kmぐらいの距離にあるPic de Gleize(2161m)です。まず、街から出ているAve. de Charance(シャランス通り)をひたすらGapの西側にそびえる山方面を目指します。住宅がまばらになりしばらくするとCanal du Drac(ドラッグ運河)を横切り標高約1200mぐらいからいよいよダブルトラックのトレイルに入ります(このあたりの公園に車を止めてスタートしても良い。ここまで舗装道路を500m弱登りますので、、、)。ここからCol de Gleize(1696m)までの約5kmはヨーロッパの登山道に特徴的な人工的に切ったトラバース道です。日本人はどうしても眺めの良い稜線に沿った山歩きを好むのですが合理的なヨーロッパの人たちは古より眺めは山頂で楽しめば良いと考え、そこまで体力を失わぬようトラバース道を切り開いたというのが私の推理です。この夏、偶然日本でもヨーロッパ気分を味わえるトラバースの登山道を発見しました。息子と行った北アルプス白馬岳と蓮華温泉ロッジを繋ぐ鉱山道と呼ばれるマイナールートです(コース上の瀬戸川という急流に橋が架かっているか蓮華温泉ロッジで確認してからコースに入りましょう。さもなくば私と息子のようにしばらく途方に暮れた後に命がけの渡渉をすることになります。)。標高2000mを超す場所への多くの作業員の登り易さを考えてトラバースの道を作ったのではないでしょうか?

Col de Gleizeまでは、舗装道路もあるのでここに車を止めてPic du Greizeを目指すことも出来ます。さあ、ここからが急登です。約3kmで山頂まで450mの登りです。すでに森林限界を超えているので、高度が増すにつれアルプスの壮大な山々が視界に入ってきます。マーモットと呼ばれる巨大なリスも沢山生息していて、人間に合うと「キィー」っと鋭い鳴き声を出して逃げていくのも目にすることが出来ます。山菜も生えているようです。毎年フランスに通い、私にはこの地域に生えているGenepi(ジェネピー)というお気に入りの山草が出来ました。リキュールやビールにいれると苦いヨモギのような風味が最高です。高山植物の種類の多さも半端ではなく、降雪が非常に多いのだろうと推察されます。事実、山頂付近は夏でも残雪が残っています。ごつごつした岩が積み重なった山頂は風の通り道のようで、夏でも寒さを感じました。Vincentは上半身裸で登っていましたが、、。山頂からの景色は日本でも見たことがないほどのスケールでした。あえて表現するなら星の数ほど山頂があるような感じがしました。おそらくこれだけの山々があれば処女峰もあるのではないでしょうか?北アルプスの最深部といわれる水晶岳の山頂から視線の限りに広がる山々を見たことがありますが、ここまでアクセスのしやすい場所でここまでの景観を見れるこの地方のランナー、ハイカーがとてもうらやましく思いました。一つ一つのピークの形状も様々で悪魔的に鋭角な山頂と表現したいほど尖った山頂もありました。帰路は、Col de GleizeからCuchon(1903m)の頂までの稜線上のトレイルを行き、Cuchonからトレイルのスタート地点まで九十九折に切ってあるトレイルを下りて今日のトレイルのスタート地点に戻るコースがお勧めです。このコースは、私の中一の息子と一緒に走って3時間ちょっとでしたが、木陰がほとんどなく乾燥していて水場もないので十分な水を持参することをお勧めします。

Trail Gapen Cimes, Franceのレース模様

「走作楽天」の第五話へとつづく

レポーター紹介
 渡邊 千春
渡邊 千春

外資系企業で働きながらも、UTMBなど海外レースをはじめ数多くのトレイルレース、イベントで活躍中のビジネスマンランナー。親子でトレイルレースへの参加やアルプス山行などトレイルを楽しむ。